2018/02/21 更新

 糸魚川市は、北陸3県(富山、石川、福井)とほぼ同じ面積の新潟県最西端に位置し、日本海に面した町。 糸魚川静岡構造線(フォッサマグナ)
の西端が通り
日本の東西の境界線上に位置する世界的にも珍しいヒスイの産地であり、景勝地親不知でも知られている。
 2005年3月19日に能生町、青海町が新設合併し、新・糸魚川市が誕生している。2015年7月1日の推計人口は45,355人。
 市内には全山石灰岩の黒姫山があり、良質な石灰岩が産出されセメント製造を始めとした鉱工業が盛んで、電気化学工業青海工場、明星セメ
ント糸魚川工場がある。
 漁業も盛んで国道8号線を走ると魚介類の販売所が多い。市振漁港、親不知漁港、姫川港、大和川漁港、浦本漁港、筒石漁港、鬼舞漁港、能
生漁港がある。姫川港はセメントなどを扱う港だが一部が漁港になっている。9月1日〜翌年6月30日の紅ズワイガニ解禁時期は国道沿いに
カニの販売店が並ぶ、最も規模が大きいのは道の駅マリンドーム能生。
 市内にはJR西日本の北陸新幹線、大糸線、えちごトキめき鉄道の日本海ひすいライン、あいの風とやま鉄道(富山県境から市振駅まで)の4
路線が通り、市内には14の駅が存在する。高速道路は北陸自動車道の親不知IC
糸魚川IC能生ICの3カ所のインターチェンジがある。
 糸魚川市は2009年8月に洞爺湖有珠山、島原半島とともに日本で最初に世界ジオパークネットワークに加盟し市内には24
カ所のジオサイトがある。景勝地はジオサイト内に存在している。


えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン糸魚川駅

北陸新幹線糸魚川駅と保存されているキハ52-156

 糸魚川駅は国鉄信越線が名立駅から糸魚川まで開通した1912(大正12)年1
2月16日に開業した。翌年北陸線と繋がり、北陸本線となっている。
 1934(昭和9)年に大糸線の糸魚川−根知間が開業している。
 2015年3月14日北陸新幹線金沢延伸開業に伴い北陸新幹線糸魚川駅が開業。
北陸本線は、えちごトキめき鉄道に移管され、在来線の糸魚川駅は、えちごトキめ
き鉄道の駅となった。在来線側が日本海口、新幹線側がアルプス口となっている。
大糸線はえちごトキめき鉄道の改札を利用する。
 

 大糸線の糸魚川−南小谷間は急勾配路線で3両のダブルエンジンのキハ52が最後
まで活躍し、多くの鉄道ファンが訪れた。
 朱色一色塗装で活躍していたキハ52156は国鉄色に戻され煉瓦車庫の一部とと
もに北陸新幹線糸魚川駅に保存展示されることになった。駅舎側に牽引機が連結され
ていて天気の悪い日や夜間は駅舎内に引き込まれる。
 残り2両のキハ52は125が千葉県のいすみ鉄道に譲渡され現役で使用されてい
る。115は岡山県の近代化産業遺産津山扇形機関車庫に展示保存されている。
 


北陸新幹線糸魚川駅前C12SLパークのC12-88

北陸新幹線糸魚川駅のNゲージ鉄道模型ジオラマ

 C1288は1934年の製造後、1935年12月根知−小滝間開業に備えて
大糸線に導入され廃車まで一貫して大糸線で働いた生粋の地元機関車。
 糸魚川小学校で屋根付きで大切に保存されていたが、校舎改修時に道路側に移設
された。移設後は屋根が設置されず、傷みが激しかったが北陸新幹線糸魚川駅完成
前に更新が行われ、元の位置でC12SLパークとして整備され保存展示されてい
る。
 

 北陸新幹線糸魚川駅高架下に建設されたした糸魚川ジオステーション「ジオパル」
内にありHOとNゲージの鉄道ジオラマがある。
 眺めて楽しむのは無料だが、Nゲージ・HOゲージとも、自分で操作する場合は有
料となる。1コントローラ30分500円で車両持込みの場合は200円。小学校4
年生以下の子どもが利用する場合、必ず保護者同伴で利用することになっている。H
Oゲージは山の向こう側にある。
 


市振宿の海道の松  

親不知海岸

 松尾芭蕉ゆかりの地「市振」は、越後と越中の国境にあり、その名のとおり京都
から見て越後の第一番の振りだしという意味。
 松尾芭蕉が市振宿で詠んだ句は「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」。芭蕉が泊
まったと伝えられる桔梗屋は、1914(大正3)年3月17日の市振大火で焼失し
てしまった。
 加賀前田候の参勤交代の要路であり、越中から越後親不知の西の入口の宿駅とし
て賑わっていた。
 北陸街道市振宿の東入口にそびえる老松で1883(明治16)年に国道が開設さ
れる以前は、東方から来訪する旅人にとっては「天下の険 親不知」の難所越えの
終点地を目指す目標として、旅人に親しまれてきた。樹齢は200年と言われてい
る。
市振ジオサイト
 

 北陸道最大の難所で「天下の険 親不知」と呼ばれていた。親知らずの由来は、断
崖絶壁と荒波が旅人の行く手を阻み、波打ち際を駆け抜ける際に親は子を忘れ、子は
親を顧みる暇がなかったことから親知らずと呼ばれるようになった。
 平清盛の弟、頼盛の夫人が夫の後を慕って親不知を通りかかった折、2才の愛児を
ふところから取り落とし、波にさらわれてしまった際に悲しみのあまり詠んだ「親知
らず 子はこの浦の波まくら 越路の磯の あわと消えゆく」という歌が由来になった
などの説がある。
 現在はJR北陸新幹線、えちごトキめき鉄道線、国道8号線、北陸自動車道で通行
に支障は無くなったが、親不知記念広場の展望台から海岸線を眺めると当時の苦難が
想像できる断崖を見る事ができる。

親不知ジオサイト
 


北陸自動車道高架下を利用した親不知ピアパーク

親不知ピアパークのブロンズ製海亀像とお食事処「漁火」

 道の駅親不知ピアパークは、全国初の海上インターチェンジである北陸自動車道
親不知ICから車で2分。
 大型無料駐車場を備え、親不知の魅力を満喫できる人気のドライブスポット。水
の綺麗な親不知海岸で海水浴、スキューバダイビング、磯釣りなどマリンレジャー
を楽しめるほか、海岸でヒスイを探すこともできる。物販施設や、飲食施設は北陸
自動車道の高架下にある。海岸からは日本海に沈む夕日の眺望も楽しめる。
 山麓にある日帰り入浴施設不知交流センターには日本海を一望できる展望風呂が
ある。
親不知ジオサイト
 

 ピアパーク広場のシンボルとなっているミリオンは、全長6m、重量5トンの世界
一のブロンズ製海亀像。
 北陸自動車道の全線開通を記念し、その橋脚には世界的グラフィックデザイナー粟
津潔氏による陶壁画が描かれている。
 奥に見える、お食事処「漁火」は漁師が自分で採ってきた魚を提供する店としてテ
レビの旅番組に度々登場する。日本海を眺めながら、新鮮な魚介類を使った格安の海
鮮料理を味わうことができる。
 海岸で拾った翡翠の原石を鑑定して加工する店もある。
親不知ジオサイト
 


道の駅マリンドリーム能生

能生海水浴場弁天岩「厳島神社」

 道の駅マリンドリーム能生は、北陸道能生ICから車で5分の糸魚川市大字能生
小泊の国道8号線沿いにある。周辺にアスレチック広場や展望台、海の資料館など
があるが、なんと言っても、日本一のベニズワイガニの直売所「かにや横丁」が有
名。カニ漁船直売なので、味も値段も大満足。その他にも新潟県内トップクラスを
誇る能生漁港でとれた魚などを販売している鮮魚センターがある。土産品販売の物
産センターや海鮮食堂、レストランもある。
弁天岩ジオサイト
 

 新潟県立久比岐自然公園に指定されている能生海岸は国道8号線に沿って連なる海
岸線には、今も昔のままの自然がたっぷり残されている。
 能生海水浴場のシンボルは、弁天岩と赤い欄干の曙橋。ブロックで湾をつくり浅瀬
になっているので、家族連れも安心して海水浴場が楽しめる。磯釣りや船釣りの拠点
として、毎年8月に行われる大花火大会の会場としても有名。
 
弁天岩ジオサイト
 


能生海洋公園

能生白山神社

 能生海洋公園は道の駅マリンドリーム能生の敷地内にあり、能生海洋高校の実習
船を利用した「海の資料館越山丸」、「マリンミュージアム海洋」また、第三セク
ターの運営による「マリンドリーム能生」等が整備されている。
 公園内の風力発電機は越山丸とともに公園のシンボルとなっていて、発生した電
力は市施設に有効利用するとともに、環境問題を含めた「クリーンエネルギー」に
ついて訪れる人々への啓蒙を行っている。余剰電力が生じた場合は、東北電力に売
電される。年間計画発電量は、約29万kw/hで、これは一般家庭約80軒分が一年
間に消費する電力量に相当する。公園内に交換したプロペラ1枚が展示
されている。
弁天岩ジオサイト
 

 弁天岩の国道を挟んだ向かい側にある、能生白山神社の茅葺き屋根の本殿は、室町
時代の特色を残す国指定重要文化財となっている。
 宝物殿にも国指定重要文化財の木造聖観音立像や船絵馬など多くの文化財があり、
裏山の社叢(通称:尾山)には、国の天然記念物に指定されている「姫春蝉」が棲息す
る。
 毎年4月24日の春季大祭には、国指定重要無形民俗文化財の舞楽が奉納される。
 かつて本殿の前を北陸本線が走っていて白山隧道が残っている。現在は久比岐自転
車歩行車道の一部になっている。本殿の山側には能生歴史民族資料館がある。  

弁天岩ジオサイト
 


小滝川ヒスイ峡

高波の池と明星山

 小滝川ひすい峡は、1939(昭和14)年に確認された日本最初のヒスイ産地で
あり、ヒスイの発見は、考古学・宝石学の分野へ大きな影響を与えた。日本各地の
遺跡から出土するヒスイはすべてここから交易などでもたらされた物。
 1956(昭和31)年に国の天然記念物に指定された小滝川硬玉産地は、姫川の
支流、小滝川に明星山の大岩壁が落ち込んだ川原一帯を指し、ヒスイのふるさと糸
魚川を象徴する日本随一のヒスイの産地、小滝川ヒスイ峡の名で親しまれている。
 この区域では岩石の採取はできないが、ここから流れ出たヒスイは姫川を下り、
市内の海岸に打ち上げられ、付近の海岸はヒスイ海岸とも呼ばれ、愛好者がヒスイ
を求め、探し歩く姿が見られる。 

小滝川ヒスイ峡ジオサイト
 

 高波の池は標高540mの白馬山麓国民休養地内にある深さ13mの一年中満々と水をたたえる高原の池。豊かな自然が残るこの池では巨大魚の目撃が相次ぎ、地元では浪太郎、翠の愛称で親しまれている。
 隣接する明星山は全山石灰岩で、大岩壁は約3億年前のサンゴ礁が変化したもので
多くの化石を含んでいる。大岩壁の下では、小滝川の清流に洗われたヒスイが観察できる糸魚川市随一の名勝。
 北陸新幹線糸魚川駅の東京方面ホーム階段に「高波の池」のパネルが展示されてい
る。

小滝川ヒスイ峡ジオサイト
 


糸魚川温泉から妙高連山(容雅岳、火打山、焼山)  

姫川渓谷と大糸線キハ52-115

 糸魚川温泉は国道148号線沿いにあり、糸魚川と静岡を縦断する巨大な断層線
「フォッサマグナ」の地中から噴出する高温良質な温泉で地下1000mから約1
00℃の湯が毎分1500リットルも噴き上げている。泉質はナトリウム・カルシ
ウム・塩化物泉で主な効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、慢性消
化器病などで、源泉の温度は97℃。
 一時旅館が閉鎖されたが、2011年からは姫川温泉ホテル国富の別館として、
「ホテル国富アネックス」が営業を再開した。
 春は一面桜が咲きほこり、残雪を頂いた妙高連山を見ることができる。
姫川渓谷ジオサイト
 

 糸魚川市と長野県南小谷村を結ぶJR西日本大糸線は急勾配路線で最後まで2エン
ジンのキハ52形が活躍した。現在はキハ120形で運行されているが南小谷へはエ
ンジンが唸りを上げて走り、糸魚川へ向かっては静かに、ほとんど惰性で走る。
 途中、姫川を8回姫川を横断する。姫川支流にも多くの橋梁がある。写真は第7下
姫川橋梁を渡るキハ52−115糸魚川行き。
 キハ52−
115は国鉄色のまま、岡山県の近代化産業遺産津山扇形機関車庫に展
示保存されている。
 

姫川渓谷ジオサイト
 


糸魚川けんか祭り(新幹線ホーム階段パネル) 

糸魚川を発車したE7系F3編成「はくたか568号」東京行き

 糸魚川けんか祭りは毎年4月10日に行われる天津神社春季大祭で、五穀豊穣を
祈って神輿をぶつけ合う「けんか祭り」。押上区・寺町区の若衆が担ぐ、一の神輿
と二の神輿の2基の神輿が天津神社の境内を周りながら、10回前後ぶつかり、も
み合う。最後は、双方決められた位置から走り出し、勝敗を決める。
 神輿の後は、国の重要無形民俗文化財の一つに指定されている舞楽が奉納され、
境内の雰囲気は動から静の世界へと一変する。
 北陸新幹線糸魚川駅金沢方面ホーム階段に「けんか祭り」のパネルが展示されて
いる。
 

 北陸新幹線糸魚川駅は「はくたか」すべての列車が停車する。日本海ひすいライン
の谷浜駅〜泊駅からは乗り換え1回で利用できるので上越妙高駅より利便性が高い。
 JR西日本では最も東の駅で、新潟県でも唯一のJR西日本の駅となっている。
 発車メロディーは糸魚川市出身の相馬御風作詞の童謡「春よ来い」を使用してい
る。最近は「春よ来い」といえば松任谷由実の曲を思い浮かべる人の方が多いが。
 駅には大糸線で
活躍していたキハ52156が煉瓦車庫の一部とともにに保存展示
されている。
 
 


トンネル内のえちごトキめき鉄道筒石駅(移管前) 

浜徳合の砂岩泥岩互層

 筒石駅の駅舎は地上にあり、駅員も地上で業務を行っているが、上下線のホーム
は全長11,353mの頸城トンネル内にある。
 トンネル内のホームは相対式2面2線であるが、トンネルの断面積を小さくする
ため両ホームは互い違いに設置されている。
 改札から下りホームまでは290段176m、上りホームまでは280段212
mである。駅舎とホームとの高低差は40m。
 えちごトキめき鉄道移管後も引き続きジェイアール西日本金沢メンテックの委託
駅として運営されていたが、監視カメラが設置されてから、駅員が長い階段を行き
来して列車を見送る姿は見られなくなった。現在、運賃は車内収受となっている。
窓口は7時10分〜18時まで、えちごトキめき鉄道の社員が配置されていたが、
2019年3月16日から無人駅となつた。 
小筒石・浜徳合ジオサイト
 

 糸魚川市のフォッサマグナ地帯には、海底に堆積した砂岩・泥岩互層が広くみられ
る。フォッサマグナの陥没地帯の海には、大量の土砂や火山噴出物が堆積して埋め立
てられた。
 この様な砂岩・泥岩互層は日本各地に見られる堆積層で、海岸に一番近い所では能
生地区の浜徳合で観察される。この地層、川詰層と称して、筒石駅周辺の崖の露頭に
見られる。
 写真は筒石駅から国道8号線の間の谷を挟んだ向かい側に見られるもだが、筒石駅
周辺では道路脇でも見られる場所がある。
 土砂は粗い砂が先に沈み、細かい泥や粘土は後からゆっくり沈見込む。こんな簡単
な原理で一回の混濁流で一つの地層ができる。砂層の上に泥の層が堆積して一組の地
層が形成されている。
小筒石・浜徳合ジオサイト
 


大糸線列車から焼山

大糸線列車から雨飾山

 焼山 2,400mは妙高山、火打山と共に頸城三山と呼ばれ、周辺の山域は妙高
戸隠連山国立公園の特別保護地区、特別地域の指定を受けている。東には火打山、
西には富士見峠を隔てて金山が連なっている日本山岳会により日本三百名山の一つ
に選定されている。
  山の大部分は火山体ではなくフォッサマグナ由来の第三紀層である。山頂には溶
岩ドームがあり、その活動史はかなり新しく、約3000年前に活動が始まった若
い火山である。また、山頂部は森林限界の高山帯で、日本におけるライチョウの分
布北限である。 焼山は秋田県にもあり、新潟焼山の名称も用いられる。
焼山ジオサイト
 

 妙高戸隠連山国立公園にある雨飾山は標高1,963m、 深田久弥によって「日本
百名山」のひとつに選定されている。山頂は「猫の耳」と呼ばれる双耳峰となってお
り、南峰には標柱と三角点が、北峰には石仏が並ぶ。
 新潟県側の雨飾山登山口にある雨飾温泉は「都忘れの湯」といわれ、内風呂・露天
風呂は源泉掛け流しの温泉で、ゆっくり温泉に浸かりながら春の新緑、秋の紅葉が楽
しめる。
 長野県側からは小谷温泉から入ることができる。小谷温泉からの登山道は比較的楽
に登頂できるが、雨飾温泉側からは急登が続く薬師尾根を登らねばならない。
雨飾山ジオサイト