2024/11/05
22:35
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HP「北陸の私鉄」今日の壁紙
富山地方鉄道本線下立駅から農家の柿 2009/10/25 撮影
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今日の列車(富山地方鉄道線)
電鉄富山駅を発車した14760形宇奈月温泉行き 2022/03/16 撮影
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木曽川水系木曽川 大井ダム湖 恵那峡 ダム湖100選
2010/12/05 撮影
遊覧船乗船場から堰堤
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今日の植物
金沢石浦神社のサザンカ 2014/11/12 撮影
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地域と高校(1)閉校のしわ寄せ
2024年11月5日 05:00
解体が進む泊高校舎。閉校を機に、周辺の人通りが寂しくなった
=10月、朝日町道下
「高校の設置は、まちづくりとは別問題」。県立高校再編を巡り、県議会
で新田八朗知事が述べてきた言葉である。根底にあるのは、再選を果たした
10月末投開票の知事選公約に掲げた「子ども真ん中」の考え方。知事にと
って「譲れない大原則」だ。急激な少子化の下、教育環境整備にまい進する
姿勢がにじむ。
だが、一部の首長らは違和感を抱く。「そう明確に割り切れるのか」と。
まちの活力維持に果たす高校の役割を重視する一人が、朝日町の笹原靖直
町長だ。高校存続と地域振興は「別問題」ではなく、「限りなくリンクする」
というのが持論。地元の泊高校が22年3月で閉校となった後、にぎわいが
乏しくなったのを目の当たりにしての実感でもある。
あいの風とやま鉄道・泊駅の乗車人数に、それが表れている。1〜3年生
がそろっていた最終年の19年度が約25万2220人だったのに対し20
23年度は約15万1220人。約10万1千人も減った。
町内唯一のショッピングセンター(SC)アスカでは、放課後に買い物や
飲食をする高校生の姿が消えた。かつての生徒数は350人台。同SC事務
局関係者は「その分の昼間滞在人口が減り、商売への影響は少なくない」と
指摘する。
同校に制服を納入する組合に加盟していた業者の一人は、制服の売り上げ
分として「年間約20万円の収益を失った」。少子化で最盛期より半減して
いたとはいえ、安定的に見込める収入。それがなくなったのを機に、加盟7
業者のうち6業者が廃業した。「閉校が商業衰退に拍車をかけた」と、存続
した業者はみる。
朝日町のように町内唯一の高校がなくなると、若年層の定着を図る上でも
痛手となりかねない。
その懸念を裏付ける全国調査結果が、三菱UFJリサーチ&コンサルティ
ング(東京)によって、まとめられている。
1990〜2017年に自治体内でただ一つの高校が消滅した31市町村
と、存続した82市町村で、人口に占める高校生年代(15〜17歳)の比
率の推移を比較。2000年は高校が消滅した市町村、存続市町村とも3.7
%程度だったが、2015年にはそれぞれ2.38、2.60%となり、0.2
2ポイント差がついた。
朝日町と同規模の人口1万人の自治体に当てはめて試算すると、高校生年
代は2000年時点で約370人。2015年までの減少幅は、高校消滅市
町村の約130人に対し、存続市町村が約110人とペースが緩やかだった。
この結果を踏まえ、調査を担当した阿部剛志・上席主任研究員は「高校廃
止の是非は、教育だけでなく、地方創生や地域振興の側面からも政策判断す
べき」と訴える。
笹原町長は若者流出や、にぎわい低下への懸念から、泊高閉校が俎上(そ
じょう)に上った2014〜18年の前回再編論議で、反対意見を述べてい
た。存続に向け、生徒を増やすアイデアも投げかけた。しかし、当時の知事
らに聞き入れられず、「地元の声をくみ取る姿勢は一切感じられなかった」
と振り返る。
その苦い記憶を胸に、「まちづくりとは別問題」という新田知事の発言の
真意を、今年4月の「ワンチームとやま会議」で、じかに問うた。せめて朝
日以外の13市町で高校を存続させてほしいとの一念だった。
知事は「地域における高校の在り方に十分思いが至らなかった」と反省を
口にしながらも、「地域のために高校があるという考えには賛同できない」
と明言。地域振興ではなく、「子ども真ん中」の視点で検討することの大切
さを、改めて強調した。
高校再編を進める側と、そのしわ寄せを受ける側との意識の差。その隔た
りは今も埋め切れていない。
知事選を終え、県立高校再編論議がさらに本格化する。少子化時代にふさ
わしい高校教育を確立する上で、地域事情とどう折り合いをつけるかが課題
だ。再編論議で浮かび上がる視点や教育現場の模索から、方向性を探る。
記事・画像:北日本新聞から