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HP「北陸の私鉄」今日の壁紙


あいの風とやま鉄道高岡駅に停車中の521系泊行き  2024/06/06 撮影
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今日の列車(JR西日本北陸本線)

福井駅を発車した521系G28編成240M敦賀行き 2018/10/21 撮影
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今日のダム湖 

岐阜県大野郡白川村牧にある電源開発御母衣ダム御母衣湖
左岸国道156号線から       2010/08/02 撮影
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今日の植物

高岡おとぎの森公園の薔薇 オリンピックファイヤー 2014/05/29 撮影
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変革の先に〜分岐点に立つ高校教育
専門学科の将来像/在学中から企業と接点
2024年8月11日  05:00
神奈川、ドイツ流で成果
 「もう小手先で調整できる段階ではない」。7月22日の県総合教育会議。
教育委員を務める富山大教育学部付属幼稚園長の黒田卓氏は、新たに示され
た県教育委員会の“短期的な改革”の中身に懸念を示した。

 提示されたのは、砺波工業(砺波市)と魚津工業(魚津市)、中央農業
(富山市)の3高校の学科・コース改編案だった。学科名は仮称としつつ、
「電子科」を「メカトロニクス学科」に、「情報環境科」を「IT・環境化
学科」に変えるなどし、早ければ2026年度に開設するとした。

 教育改革を進める立場にある県教委。「社会のニーズを踏まえ、より良い
学びを提供したいとの思いから、長期、短期の改革を分けて検討する」と説
明したが、現状と何がどう変わるのかは具体性に欠けた。

 黒田氏は「慌ててやる必要があるのか」と苦言を呈し、他の委員も名称変
更といった枝葉の議論ではなく、学科の在り方そのものの議論を深める必要
があると指摘。8月の会合で引き続き議論することになった。

 工業高校や農業高校の各学科は専門学科と位置づけられる。県教委が前の
めりにメスを入れようとするのは、定員割れが深刻だからだ。県立7校に設
けられた工業科は2021年度以降、志願倍率が1.0倍を下回り、2024
年度は0.87倍。全体の志願倍率1.01倍と大きな差がある。

 各工業高校は長年、富山の基幹産業である製造業を中心に人材を送り込ん
できた。だが近年は進学を選ぶ生徒が増えている。県立7校の22年3月卒
の生徒のうち、進学者は14年から6.1ポイント増え36.9%に上る。

 人材の奪い合いは過熱し、富山工業高校(富山市)では今年、就職を希望
する生徒約230人に対し、7月1〜5日の5日間で399社から千人を超
える求人が集まった。「産業界のニーズに応える上で、いかに就職先とのミ
スマッチを減らせるかが重要だ」と岩原善延校長。インターンシップなどを
行い、生徒の進路先選びの支援に心を砕く。

 先駆的なミスマッチ防止策に取り組むのは神奈川県だ。「座学」と「技術
の習得」の両輪で学ぶドイツの職業教育プログラム「デュアル・システム」
を参考に、生徒が在学中に企業で経験を積む仕組みを設けた。

 「デュアル」は「二つの、両方の」との意味。生徒は学校での学習と並行
し、1年間にわたり自動車整備工場や食品会社で技術や商品開発のノウハウ
を学ぶ。2023年度は20企業・施設が協力し、6校の工業系、商業系学
科の生徒が参加した。

 神奈川県教委によると、生徒からは「学校での勉強が会社で生かせた」、
企業側からは「技術指導が社員の成長にもつながった」と好評だ。福祉や看
護、農業の分野にも応用できるとみて、今後も活動を拡大させるという。

 「予算や人材が限られる中、富山の教育を考える上でも参考になる」。富
山経済同友会教育問題委員長の土屋誠氏(日本海ガス社長)は、デュアル・
システムをこう評価する。昨年9月には同友会の視察団が本場ドイツを訪れ
た。「ドイツには、地元の商工会議所や企業がお金を出し合い、子どもを育
てていこうという風土がある」と語る。

 教育改革の議論では、持続可能な地域づくりを進めるために「高校と地域
の産業界の連携強化が必要」との声も多く上がる。若い人材が県外に流出し、
地域の担い手が減り続ける中、地元で働きたいという子どもの願いに寄り添
える専門学科をどう整備するのか。求められているのは、小手先ではない抜
本改革だ。

電源メーカーでのインターンシップに取り組む富山工業高校の生徒(右)
7月上旬、富山市内

記事・画像:北日本新聞から